診療ネッワーク4

耐用性の面で問題も   新しい人工関節開発

手術後10年、人工関節が痛む


 主婦の美津子さん(63)仮名は、10年前に変形性股関節症で人工関節を入れる手術を受けた。その後、快適な生活を送っていたが、3年ほど前から左股関節に軽い痛みを感じるようになり、再び杖に頼る生活になった。良い治療法がないかを相談するために受診した。


 「もう1度、手術をすることが出来ませんか」と美津子さん。
人工関節についての基本を説明しました。
 人工関節は、変形股関節症の治療に大きな効果を挙げていますが、耐用性の面ではまだまだ問題があります。また、2度目の手術は1度目に比べると容易ではなく、耐用性も一般的に1度目と比べると落ちることも覚悟しなければなりません。
 以前は、セメントを使って、関節を骨に固定させる方法が行われていましたが、セメントと骨の間でゆがみが生じたり、骨が吸収される問題を起こすことも明らかになり、現在は、セメントを使わずに直接密着させる人工関節も開発されています。しかし、人工関節を動かすうちにプラスチックと金属の接触面が磨り減って、その粉により骨が吸収され、ゆがみを生ずる場合もあります。
 私たちは、名古屋工大と共同で、チタン表面にガラスを介してアパタイト(リン灰石)を付けた新しいタイプの人工関節を開発しました。基礎研究でこの人工関節は骨への初期固定が早期に完成することが明らかです。
 40例に実施した段階で、1例も問題は生じておらず、理論的には最も優れた人工関節と考えられています。

(平成10年1月9日 中日新聞朝刊名大教授 岩田 久先生)



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