さ(5)



[15] 【自分の最善を尽くす】

 太閤秀吉という人は、ぞうり取りになれば日本一のぞうり取りになったし、炭番になれば最高の能率をあげる炭番になった。そして馬まわり役になったら、自分の月給をさいてにんじんを買い、馬にやったという。このため嫁さんが逃げてしまったということだが、そこに太閤の偉大さがある。馬番になったが、「俺はこんな仕事はいやだ」などと言わずに、日本一の馬番になろうと努力した。
 つまり、いかなる環境にあっても、自分の最善を尽くし、一日一日を充実させ、それを積み重ねていく。それが役に立つ人間であり、そのような事が人を成功に導いていく道だと思うのである。


[13] 【忍ぶべきを忍ぶ】

誠心誠意いいものをすすめたけれども用いてくれないというので憤慨し、これは相手が暗愚だからしょうがないとやけになって、結局うちこわしになってしまうことが、ままあるようです。
 しかし、そういうことでは、私はたいしたことはできないだろうと思います。用いてくれなければ時をまとう。これだけ説明してもだめだというのは、これは時節がきていないのだーそう考えてじっと忍耐していくところから、無言のうちに知らしめる、というような強い大きな誠意が生まれてきます。そしてそのうちに、相手が自ら悟ることにもなって、それが非常な成功に結びつくことにもなりましょう。


[12] 【世界に誇れる国民性】

同じ日本人でも細かく見れば、考え方や性格など実にいろいろな人がいるわけですが、しかしまた一面には、日本人には日本人としての共通の特性というか、日本人独特の民族性、国民性というものがやはりあるように思います。日本独特の気候や風土の中で長い間すごしているうちに、たとえば日本人特有の繊細な情感というようなものが、しだいに養われてきたといえるでしょう。
日本人の国民性の中にも、反省すべき点は少なくありませんが、とくに勤勉さとか、器用さとか、恵まれた気候風土と長い歴史伝統によって養われてきたこういう特性には、世界にも大いに誇りえるものがあるように思うのです。


[7] 【人生の妙味】

雨が降ったり雷が鳴ったりという自然現象はある程度の予測ができるものの、正確にはつかみえない。
われわれの人生の姿も、この自然現象とよく似たものではないだろうか。そこには、天災地変に匹敵する、予期できない多くの障害がある。われわれはそれらの障害の中にありながら、常に、自分の道をもとめ、仕事を進めてゆかねばならない。そこに“一寸先は闇“とよく言われる人生のむずかしさがあるのであるが、そういう障害を乗り越え、道を切り開いてゆくところに、また人生の妙味があるのだとも思う。予期できるものであれば、味わいも半減してしまうであろう。


[2] 【上位者に訴える】

自分が最善を尽くしてもなお、これがいい方策だという確信が生まれない場合は、直ちに上位者に訴える必要があります。
もちろん、それぞれの人が会社の基本方針にのっとりつつ、責任をもって自主的に仕事を進めていくという姿はきわめて好ましいと思います。けれどもうまくいかない非常に困難な場合、自分だけで悩み、上位者に訴えない。上位者はうまくいっていると思って安心している。どうしてもいけなくなって、訴えた時はすでに手遅れだということが往々にしてあります。具合の悪い時は瞬時も早く上位者に報告して指示を仰ぐ、それが本当の責任経営だと思うのです。